結婚詐欺女

新聞によると、女は、「部活は吹奏楽部で成績はかなり良かった。中学時代に両親が離婚し、都内の高校に進学した。その後、父親が自殺した」とある。
テレビではさらに詳しく報道されている。
これだけの生い立ちの情報から、結婚詐欺さらには、殺人へとつながるとしたら、かなりの想像力を必要とする。
一番気になる部分は、父の自殺の部分だ。
騙された男達が、父親の死んだ年齢や生きていればこの歳だろうという点も気になる。
まるで、父の自殺をなぞる様な犯罪という印象をもつ。

そこには、父と同じような男がいる。
お金を持っている。
頼めば、まるで父のようにお金をくれる。
甘えさしてくれる。
しかし、その男は「父」ではない。
「父」ではありえない。
実の「父」もまたなぜか「父」のままではいてくれなかった。
「父」であることを、なぜか途中で放り出した。
ちょうど、私の「父」が死んだように、「父」でなくなる男は、死ななければならない。
自殺しなくてはならない。
贋物の「父」は、死なねばならない。

この事件の中核に、「父の死」があるとするなら、事件の表面の凶悪性にもかかわらず、この女の取り返しようのないものを取り返そうとする必死の努力とも見える。

そんなことをふと思いついた。