2010-01-01から1年間の記事一覧

嫉妬について34

近代の話の前に、身分制が嫉妬に対してどう対処しているかを見る必要がある。 おそらく「治世」にとって、「嫉妬」を適正規模にコントロールすることがもっとも重要だと思う。 まず、「実力」のある人間を「上」に引き上げる必要がある。 これが、テクノクラ…

嫉妬について33

近代を特徴付けるやり方にはいろいろあるだろうが、とりあえず、身分制の廃止だろう。 建前としての「平等」だ。 普通選挙を通じての参政権がその実質だ。 それから、「自由」というのも重要だ。 建前としての経済、身体、表現の自由という奴。 これにより、…

嫉妬について32

「嫉妬する自分は、最低で弱く醜い人間だと思う。」 と書いた。 嫉妬する人間は、人の失敗を笑う。 しかし、失敗した人間をみて「笑う」ことが「同情」することより、よりマシで、強く、見苦しくないとはいえない。 まして、マトモな人間なら「本来」そうあ…

嫉妬について31

最近、他人の「失敗」をみて笑った。 典型的な「人の不幸は、蜜の味」の世界である。 流石に「理性」が働いたので、笑う自分、機嫌のよい自分を「抑制」したが、一人ならもっと笑ったかもしれない。 私も当然、嫉妬深い人間だ。 嫉妬する人間の最大の娯楽が、ア…

嫉妬について30

嫉妬を別な観点から考えてみたい。 それは、「ハダカ」と関係している。 あるいは「秘密」でもいいかな。 まず「ハダカ」の話からはじめる。 「ハダカ」といえば、何を思いつくだろうか? 「自然」「ありのまま」「美しい」? それとも 「あられもない」「みっとも…

嫉妬について29

アメリカに住んでいたことがある。 仕事だ。 そのとき、ハンカチで鼻をかむアメリカ人をみて、「汚い」と感じた。 また、パンで皿に残ったソースをふき取って食べるのも何か「下品」と感じたのだ。 私は、文化に対して相対主義だと自認していたので、自分が反射…

嫉妬について28

小笠原礼法についてのwikの記事を抜粋する。 「江戸時代は武士が支配する階級社会であったが、5代将軍徳川綱吉の頃は、経済の実権が商人に移り、豪商の財力がなければ武家社会の経済は成り立たなくなっていた。町人に経済的な力がつくにつれ、体系だった礼法…

嫉妬について27

男が腕力で勝負を決める。 この「腕力」というと「筋力」と混同しそうだが、自分の才能や日ごろの鍛錬、新規技術の導入、相手に対する情報戦も含まれる高度な戦いでありえる。 まして、集団同士の喧嘩となれば、それは組織された「文化」でありえる。 そうし…

嫉妬について26

「私のために喧嘩はやめて!」 女が叫ぶ。 若い男達は、女を巡って取っ組み合いの喧嘩を始めたからだ。 「腕力」に勝るものが、女を手に入れる資格があると彼らは信じている。 この目の前の男に腕力で競り勝てば、勝者には戦利品として「女」が与えられると信…

嫉妬について25

ここまで書いて気がついたことがある。 日本文学の中で、やはり傑作といえば、「万葉」「古今」「新古今」「源氏」「平家」「奥の細道」、明治では谷崎等が思い浮かぶ。 江戸文学は、ちょっと特殊でランクが落ちるという風に思い込んでいた。 西鶴や近松や馬琴は、…

嫉妬について24

嫉妬は、平和時における戦争の継続であるという主張をさらに補強すべく、「大奥」から今度は江戸「吉原」に話を移す。 吉原の起源は、神君家康の治世にさかのぼる。 平和な時代を象徴するような出来事ともいえる。 金さえあれば、安心して女遊びが出来るのだ…

嫉妬について23

嫉妬は、個人的な感情と考えてしまい勝ちだ。 確かに、悲しく、恐れ、怒り狂っているのは、個人のように見える。 誰もが理解しはするが、誰も許しはしないのも「嫉妬」だろう。 もし他人の「嫉妬」を許すなら、際限のない狂気しか残らない。 嫉妬には、同類の…

嫉妬について22

以上の考察により、平和な時代における戦争状態こそが「嫉妬」の本質であるといえるはずだ。 多分。 ここには、永遠不変の不可侵の所有権などというものなどない。 盗み盗まれたものしか存在しない世界で、誰かがとりあえず「俺のものだ」「私のものよ」と主…

嫉妬について21

江戸幕府は、大名の末期養子を禁じていた。 末期養子とは、末期に慌てて養子を立て世継ぎとする仕組みだ。 代替わりでの、世代交代を安定させるために必要とされた。 逆に言えば、正式な世継ぎを作れなかった大名は改易された。 改易とは、城と領地の没収の…

嫉妬について20

さらに、大奥は続く。 夏こと順性院は、家光の側室。甲府宰相の生母。6代将軍徳川家宣の祖母になった人だ。 父は京都の町人の弥市郎と言い、娘の夏が家光の子を出産したことで士分に出世、はじめ岡部八左衛門重家、のち藤枝重家と改名した。 夏は家光の正室…

嫉妬について19

「楽」後の宝樹院は、家光の側室で、四代将軍家綱の生母である。 彼女の出世は、ある意味秀吉をしのぐ。 栃木県の「農民」の娘である。 しかも、父は、禁猟とされていた鶴を撃ったため死罪になっている。 父の死後、母は江戸へ出て古河藩主の屋敷に仕え、女…

嫉妬について18

一応、「嫉妬」の歴史的起源を徳川幕府初期の武断政治から文治政治への移行期に位置づけている。 天下が平定されるともはや「武力」による「国盗り」という仕事はなくなり、「暴力装置」としての武士には、「仕事」がない。 つまり失業する。 残る仕事は、退屈…

嫉妬について17

最初の嫉妬を無事通過すると、次に来るのが世代間の嫉妬である。年寄りの若いもんに対する嫉妬あるいは羨望であるいは、若いもんの年寄りに対する嫉妬あるいは羨望である。 この世代間の嫉妬は、同世代の「嫉妬」を中和させ「団結」や「友情」を生む基盤になる…

嫉妬について16

典型的嫉妬というか標準的嫉妬あるいは、最初の嫉妬とでも言うべきものがある。 一人っ子には、経験できない。 つまり、アベルとカインだ。 「カインは収穫物を、アベルは肥えた羊の初子を捧げたが、神はアベルの供物に目を留めたもののカインの供物は無視し…

嫉妬について15

嫉妬はかくも自然で強力なエネルギーなのだから、その制御さえ間違わなければ、創造的なエネルギーに変換できそうな気がしてくる。 嫉妬は容易に、野心を持続させたり、観察眼を磨くことにプラスに作用するだろう。 嫉妬は努力家を生む。 嫉妬はより強力な嫉…

嫉妬について14

最近、彼氏が冷たい気がする。 メールの返事が返ってこない。 デートしていても、以前ほど会話が盛り上がらない。 どうしたらいいでしょう!? という悩みを抱えている若い女に、カウンセラーがアドバイスする。 彼の「嫉妬」をちょっと刺激するといいかもし…

嫉妬について13

正当な所有者とは誰か? その所有の由来が不正なものであれば、通常そのものの所有権はない。 例えば、盗品は、それを盗んだ人のものではない。 当然、盗品を誰か別の人が盗んだとしても罪には問われない。 罪に問われるも何も、法的に保護すべき被害という…

嫉妬について12

天下統一され、家康、家忠、家光と武断政治が続く。 基本的に、幕府の都合「のみ」で多くの大名が整理される。 落ち度などない。 これにより、浪人が、満ち溢れる。 この浪人の不満を背景に、由比正雪が乱を計画し、失敗する。 こうした状況にやっと危機を感…

嫉妬について11

人が欲しがるものには、いろいろある。 人が欲しがるものを「所有」している人に、我々は嫉妬する。 嫉妬は、他人が「所有」することが、正しくないと感じる。 自分が所有することこそ正しいと感じる。 しかも、自分の「所有」を嫉妬により「同様に」侵害さ…

嫉妬について10

力による支配から法による支配へと移行すると「嫉妬」は「男」から「女」へと移行する。昼から夜へと移行する。陽から陰へと移行する。 のかな? 男が女性化する。 武者がオジャル化する。 「嫉妬」は法的な公平とか妥当に間接的に働きかけるようになる。 嫉…

嫉妬について9

嫉妬を稀少な財をめぐる競争と定義する。 稀少な財の争奪を巡っての「仁義なき戦い」をいかに組織し、耐えられるものにするかという技術開発が要請される。 嫉妬のもつ破壊力は、そのエネルギーを制御する必要性を生む。 豊かであれば、群れる必要性はない。…

嫉妬について8

観察力といえば、人の持つ本来の能力と思われるだろう。 しかし、人は何でもかんでも観察するわけではない。 その対象に対する関心とその持続が必要だ。 持続は経時変化だから当然その対象への観察者の強い拘束を前提にする。また、関心は価値付けを前提にす…

嫉妬について7

偉そうにしない人、腰の低い人という人がいる。 目立たないようにしているのだ。 何故か? 嫉妬されないようにあらかじめバリヤーを張っている。 予防線を張っているといえる。 嫉妬のもたらす副産物だろう。 逆に、大げさに自慢して嫉妬を過剰に煽ることに…

嫉妬について6

自分に自信のある人、誰にも負けないというものを持っている人は「嫉妬」から自由だといわれている。 確かにそう見える。 しかしこれは明らかに言いすぎで、嫉妬しそうになった時に逃げ込めるシェルターがあるぐらいのことでしかないし、そもそもの誰にも負…

嫉妬について5

スピノザは、「エチカ」で全ての感情を基本的な感情の組み合わせとして体系的に説明する。 この説明を理解するプロセス自体に一種のカタルシス効果があり、「エチカ」を読む前と読んだ後では、「感情」に関して少し「距離」を取れるようになる。 感情に流さ…