麻薬

麻薬の経験のない人が、麻薬の誘惑に惹かれる理由は、表面的には、やった事は無いが、なんだか凄く気持ちがいいらしいという噂だろう。
やったことのないことというものには、それだけで魅力がある。
新しい経験が、新しい視野をもたらし、見えないものが見えたり、重要だと思っていたことがつまらないことに思うようになるかもしれない。
事実、ヤクチュウの人たちは、ヤク以外のものに興味を失う。
普通の価値観を維持できなくなる。
長い間の信念というか価値体系が崩れるという体験は、それだけで「価値」がある。
人は、一人前になるためにこうした命がけの価値転倒を通過する必要があるからだ。
そういう意味で、法律的、医学的視点を抜きに言えば、麻薬の使用自体は、イニシエーションとしての役割を担っているといえる。
イニシエーションなき時代に、麻薬の使用が擬似イニシエーションとして機能するのは、不思議ではない。
近代の価値転倒といわれる経験は発見されて100年以上経つが、ただ既存の価値をぶっ壊せばそれで「自然」に新しい「価値」が見つかるというほど「お気楽」な体験ではない。
こうしたお気楽な連中は「別荘」にでもいって、当然バカンスでも楽しむべきだろう。
麻薬で、ガキが捕まるたびに、思うことだ。