続アメリカと銃

以上まとめると、王をの権力を制限するため、近代は当初武力に訴えたのだが、それ以後、民衆は武装解除され、武力は警察や軍に独占させた。そのかわり、選挙や議会が新たな権力闘争の舞台となる。宮廷が議会に模様替えをしたわけだろう。これが、普通の国家権力というものだ。
ところが、アメリカは違う。小さな国の寄せ集めで、今だに全国を統一できるだけの絶対的権力を保持していないように見える。北軍南北戦争に勝利した後でも、民衆の武装解除はなされていない。アメリカで、社会的に差別され、貧困にあえぐ層が、組織的に武装蜂起なり暴力革命なり独立なりを目指すとすれば、他の国と比較して簡単にできそうだ。また、利権を求めて、カリフォルニアがオレゴンネバダを侵略してもよさそうなものだ。ニューヨーク州独立運動でもいい。
武器は簡単に調達できる。ところが、現実にはたまに大統領が暗殺されたり、無差別殺人が起こりはするが、少々治安が悪い程度で済んでいる。アメリカの政治が理想的であるわけもないのだから、政治と武装を少なくとも国内においては、ほぼ完全に分離することに成功しているように見える。民衆の武装が政治的には全く脅威ではないのだ。あるいは、むしろ歓迎すべきことなのかもしれない。